イソフラボンのチカラIsoflavone

何があったの?「イソフラボン騒ぎ」の全てが知りたい

一体、なぜ突然イソフラボンが話題になったのか?といぶかる方も多くいらっしゃいます。
「何があったの?」とおっしゃる方のために、できるだけ客観的にことの次第をご紹介します。

ことの起こりは新しい「トクホ」の申請から

既にご紹介したように、特定保健用食品(トクホ)は、申請された商品ごとに個別に審査されます。
2004年、3つの商品が新規に申請され、厚生労働省から食品安全委員会に影響審査が諮問されました。これまでの明らか食品とは違って過剰摂取の心配のある錠剤状のものが二つと、イソフラボン含有量が既存のトクホを上回るイソフラボン強化味噌です。
そのため、食品安全委員会では「食生活に上乗せして摂取する場合の安全性」について評価を行うことになりました。

トクホの審査は、現在では

  1. まず厚生労働省で主に有効性の審査を行い→
  2. 必要と判断された場合、食品安全委員会で食品健康影響評価(安全性審査)が行われ→
  3. 再び厚生労働省で全般にわたる評価・審査を行って許可される仕組み

ですが、上記の申請当時は、② の安全性評価が先に行われていました。

(なおこれら3商品のトクホとしての評価結果は、錠剤については注意書きを加えることで安全性に問題はないとし、味噌の場合、申請の目安量では多すぎること、また、使用対象者を限定することも難しいことから、安全性が確保できないとされました。)

食品安全委員会の作業

食品安全委員会では、日常の食事に加えて摂取する場合に健康影響を及ぼす可能性はないか、長期間摂取した場合の安全性などについて、足かけ3年をかけて「安全性評価」の検討が行われました。
2004年1月から15回の審査会がもたれ、途中国民からの意見・情報の募集や意見交換会を含め、世界中の試験報告等研究論文100報以上を精査、各国の状況などを検討した上で、2006年5月、報告書『大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方』としてまとめ、評価結果が厚生労働省に答申されました。
これがいわゆるイソフラボン安全性評価です。
但し、この食品安全委員会では「有効性」ベネフィットについての評価は行わず、「リスクの可能性」についてのみが検討されています。

報告の内容

食品安全委員会での検討結果。結論は―――

  1. 1日上限摂取量を70~75mgとし、食事に上乗せして摂取するトクホは1日摂取目安量をアグリコンで30mgとする。
  2. 妊婦・乳幼児・幼児には、食事に上乗せての摂取は推奨できないとする。
  3. 但し、上限値70~75mgは毎日欠かさず長期間摂取する場合の平均値としての上限値であり、この量を超えることにより、直ちに健康被害に結びつくというものではないことを強調。特保の30mgも同様で、より安全性を見込んだ慎重な値であることに留意すること。

―――というものです。

1日上限摂取目安量を75mgとしたわけ

閉経後女性に1日150mgの錠剤を5年間摂取させた結果、子宮内膜増殖症の発症が有意に高かったというイタリアの研究報告(Unfer V, et al., Fertility and sterility 82:145,2004)から、150mgを健康影響発現量として、その1/2、75mgを安全な1日摂取目安量の上限値とする。
また、(日本人の日常摂取量から健康被害は報告されていないことから)国民栄養調査での摂取量の95パーセンタイル値(64~76mg)を食経験に基づく安全な1日上限摂取量とする。
これらに基づき、現時点での安全な1日摂取目安量の上限値を70~75mgとする。
データ不足から胎児、乳幼児、小児と妊婦は検討に含まれていない。

食事に上乗せするトクホでの摂取量を
30mgとした根拠

閉経前女性に日常の食事に加えて1日57.3mgのイソフラボンを含む豆乳を2月経周期摂取させた結果、血中エストロゲン濃度の低下と月経周期の延長傾向が併せてみられたという日本の研究報告(Nagata C, et al., J. Natl.Cancer Inst. 90:1830,1998)から、57.3mgを上乗せ摂取による最低影響量とみなす。
個人差等に配慮して、その1/2量28.7mg、およそ30mgを閉経前女性のトクホとしての1日上乗せ量とする。

閉経後女性と男性についての扱い

閉経後女性と男性は、データがないので閉経前女性の結果をあてはめて、30mgとする。

乳幼児、小児についての扱い

安全性上の科学的な判断はできないが、日常の食事に上乗せして摂取することは、推奨できないとする。

経緯と論議

食品安全委員会では、先述のように効能やベネフィットについては触れずに、リスクの可能性についてのみ、評価検討されています。
ちょうどイソフラボンがブームのように取り上げられていたところからマスコミの関心を呼び、部分的に取り上げられたり、現状があたかも摂り過ぎで75mgを少しでも 超えると健康被害が生じるかのような印象の報道も多く、「30mg」や「75mg」の数字の一人歩きが一般消費者に必要以上の不安感を煽ったことは否めません。
答申前に行われた一般からのパブリック・コメントの募集でも異例とも言える多くの意見が寄せられ、その大部分は審議内容を疑問視するものでした。
「報告書」が答申された後にも、専門の先生方から多くの意見が発表され、主に情報が十分でない中で「上限値」や「上乗せ量」の数値を決めたことの非科学性が指摘されています。
その上で、多くの専門家のアドバイスとしては、これらの「数値」に神経質にとらわれることなく、健康のために大豆食習慣を大切にしようというのが大方の意見です。

報告書「おわリに」の内容

食品安全委員会の最終報告書では、「おわりに」として以下のような注意書きが示されています。原文を引用しておきます。

大豆は植物性たん白質、カルシウム等の栄養素に富む食品であり、大豆からたん白質を摂取する日本の食事形態は、主に畜産品をたん白質源とする欧米型の食事形態に比べ、脂質やカロリー摂取が低く、健康的とされている。

なお、大豆イソフラボンアグリコンの一日摂取目安量の上限値、70~75mg/日は、この量を毎日欠かさず長期間摂取する場合の平均値としての上限値であること、また、大豆食品からの摂取量がこの上限値超えることにより、直ちに、健康被害に結びつくというものではないことを強調しておく。

今回の大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価においては、これまでの長い食経験を有する大豆あるいは大豆食品そのものの安全性を問題としているのではなく、特定保健用食品として、大豆イソフラボンを通常の食生活に上乗せして摂取する場合の安全性を検討した。

また、設定された一日摂取目安量及び特定保健用食品としての一日上乗せ摂取量についても、この量を毎日欠かさず長期間 摂取する場合の平均値としての上限値であること、その上で、今までに収集、検討し得た試験報告等に基づく現時点での値であり、以下の情報等が入手できなかったことから、より安全性を見込んだ慎重な値となっていることに、留意する必要がある。

  • 大量の大豆イソフラボン強化食品を摂取する群に基づく摂取基準設定可能な調査
  • 安全性の観点からの大豆イソフラボン摂取に関する長期疫学的調査
  • ハイリスクグループ(胎児、妊婦、乳幼児、小児、がん患者等)を考慮した調査

(以下略)

もっと詳しい情報が知りたい方へ

食品安全委員会HP・Q&A

厚生労働省HP・Q&A

農林水産省HP・Q&A

関連ページ・リンク

詳細情報 食品安全委員会「報告書」に対する批判や意見

keyboard_arrow_up