「知って得する 和食の知恵」
~冬の巻~
我が国は周囲を海に囲まれ、温暖な気候で春・夏・秋・冬と四季があり、そこで生まれる旬の食材や自然の恵みを受けて暮らすことで伝統的な食文化が生まれました。
また、人の一生を通しての儀式にまつわる食や年中行事にまつわる食などを通して人と人との絆を築いてきました。
日々の暮らしの知恵や思いが込められている伝統文化を知り、日常生活にも活かしていきましょう。
縁起のよい開運おせち
お正月に味わう伝統の味、おせち料理。毎年何となく口にしているお馴染みの料理も、実はそれぞれに家族の健康や幸せを願う特別な意味が込められています。ご馳走が多いことを「盆と正月が一緒に来たような」といいますが、昔はお餅や御神酒などのご馳走が食べられるのは、この日だけでした。ところが、食生活が豊かになり、それこそ「毎日がお正月」のようになってしまった現代では、おせちを食べないで過ごす人も増えています。手間や時間をかけなくても、 一年の始まりにはめでたさを食卓で祝いたいもの。今回は、手軽に作れる『開運おせち』をご紹介します。
祝い肴 3種
おせちに欠かせない基本の料理と言われるのが「祝い肴」「三つ肴」と呼ばれるものです。地域や家庭によって違いがありますが、一般的には関西では、黒豆、数の子、五万米(ごまめ)、関東では黒豆、数の子、たたきごぼうが基本とされています。なぜ、3種かというと、中国の陰陽道では奇数がめでたいとされていて、『三』という数字は全体をまとめるという意味もあるためです。
重箱の詰め方
江戸時代の伝統的な重箱は、五段重ねに蓋が2枚ついていました。四段目までご馳走を詰め、五段目は「控えの重」といって重箱に隙間ができたときに補充するための料理を入れるものでした。今では簡略化した三段重が多いのですが、一段目には祝い肴とオードブルにあたる口取りの金団、かまぼこ、伊達巻き、昆布巻きなどを、二段目には焼き物、揚げ物、酢の物など、三段目にはお煮染めなどを詰めます。
【12/8更新】
開運たたきごぼう
たたいて、運を開く!
ごぼうは深く長く根を張るため、ごぼうのように根を張って生きるという意味。また、煮たごぼうをたたいて開くことで運が開けるようにとの願いを込める。ごぼうは1000年も前に中国から伝えられた野菜ですが、我が国以外では食べる習慣がないため、太平洋戦争の時には木の根と思われ、陸軍中尉が捕虜虐待で有罪になったという歴史も。お正月の祝い菓子『花びら餅』にもごぼうが使われます。ごぼうは食物繊維の一種イヌリンが多く、腸の働きを活発にし、糖尿病予防にも役立ちます。
赤しば&チーズの日の出かまぼこ
紅白で門出を祝う!
お正月や祝いの膳に欠かせないのが、かまぼこ。板に半円形に盛られたかまぼこは日の出を連想させるためです。紅白をそろえることでめでたさが増しますが、赤は魔除け、白は清らかさを表します。かまぼこの他にも、大根とにんじんで「紅白なます」を作りますが、これにも同じ意味が込められています。
にしんの黄金焼き」
子孫繁栄を願って!
祝い肴に欠かせない数の子はニシンの卵。かつては春になると産卵のために大量のニシンが北海道沖に現れたため「春告魚」とも呼ばれ、ニシンの卵を干したり塩漬けした加工品が子孫繁栄や子宝につながるからとお正月の祝い肴に欠かせませんでした。ニシンの子を数の子と呼ぶのは、北海道地方でニシンを「カド」と呼んでいたためで、「カドの子」が「数の子」になったと言われています。
豚肉と野菜のよろ昆布巻き
名や運が広がるように!
昆布は「よろこぶ」に通じ、また昆布は「ひろめ」とも呼ばれるため、お正月には昆布巻きや結び昆布が欠かせません。昆布は、旨味(グルタミン酸)だけでなくミネラルも豊富。水につけるととろとろネバネバするのは、水溶性の食物繊維アルギン酸が多いためです。アルギン酸は体内でナトリウムと結びついて余分な塩分の排泄を助けます。また、小さくても尾頭付きの「五万米(ごまめ)」を食べるとき、「ごまめでもお頭付き」などというのは、たとえ小さくても卑屈になることなく、一国一城の主として、充実した暮らしを願うとの意味。だしを取った後の昆布はごまめと一緒にから揚げにすると、お酒のおつまみに最適です。
黒豆ときんとんの茶巾
豊かさを求めて!
「金の塊(かたまり)」を意味する「金団(きんとん)」はお金持ちになれますようにとの祈りを込めて食べる祝儀もの。ゆで卵を白身と黄身に分けて裏ごしし、調味して重ねた「錦卵」も、それぞれ金・銀を表し豊かさの証しとされています。また、マスの塩焼きは「増す増す」につながり、煮染めのふきは「富貴」に通じるからと金運を呼ぶための祝儀ものとされています。