低温で発酵が進む
手作りヨーグルトで心と身体の
健康をサポート!
子どものQOL向上編

はじめに
近年の日本では、家庭環境の変化によって、子どもの孤食や親子関係の希薄化が社会問題となっています(1)。これらは、子どものQOL(Quality of Lifeクオリティー・オブ・ライフ=生活の質)の低下や精神的成長へ影響が及ぶ可能性があることが指摘されています(2)。
そんな中、子どものQOLを向上させる取り組みが注目されています。そこで、過去の研究(3)で、高齢者のQOL向上に影響があることが示唆された「ヨーグルトの手作り」に注目し、子どものQOL向上にどのような影響を与えるかを調査しました。
ヨーグルトの手作りで子どものQOL向上
室温で発酵する「カスピ海乳酸菌(クレモリス菌FC株)」を用いると、家庭でも手軽にヨーグルトを作ることができます。
そこで、小学3~6年生の親子68組を対象に、「カスピ海乳酸菌」を用いたヨーグルトの手作りが、子どものQOL、ストレス、親子関係に影響があるのかどうかを調査しました。調査は、次の3つのグループに分けて実施しました。
【グループ】
(A)「カスピ海乳酸菌」を使ったヨーグルトを手作りして食べる
(B)市販の「カスピ海乳酸菌」が入ったヨーグルトを食べる
(C)普段と変わらない生活をする
調査期間の0週目、4週目、8週目に、各グループの子どもたちに対して、QOL、ストレス、両親への気持ちに関するアンケートを実施しました。その結果、ヨーグルトを手作りして食べた(A)グループでは、子どものQOLの向上やストレス度合いの低下が見られました(図1)。一方、市販品を食べたグループ(B)や普段通りの生活をする対照グループ(C)では、これらの変化は見られませんでした。
◆「カスピ海乳酸菌」を用いたヨーグルトの手作りによるQOL総合得点の向上


-
対象者:小学3~6年生の親子68組
QOL総合得点は、「小学生版QOL尺度」を使って評価しました。 - *は p<0.05 で有意差があること(Wilcoxon の符号付順位検定による 0 週目との比較)、
#は p<0.05 で有意差があること(Friedman 検定による群内での比較)を示しています。 - 出典:日本食育学会誌、19(2)、53-62、2025
ヨーグルトの手作りで親子関係にも変化が?!
ヨーグルトを手作りしたグループ(A)の保護者にもアンケートを実施しました。ヨーグルト作りを続けることで、子どもとのコミュニケーションの時間が増えて、関係性が「良好になった」と感じる保護者が過半数にのぼりました。
◆ヨーグルトの手作り実施後のアンケート結果
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ヨーグルトの手作り(試験全体)を通してお子様とのコミュニケーションは良好になりましたか?
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ヨーグルトの手作り(試験全体)を通してお子様とのコミュニケーション時間は増えましたか?
生活のリズムや子どもの責任感にも変化が!
調査に参加した保護者からは、ヨーグルトを手作りすることで、「生活にリズムができた」「責任をもって役割を果たしていた」など、子どもの変化を喜ぶ声も上がりました。
- 自分で作っているということから甘さの調節や色々なフルーツや飲み物を混ぜてみたりと実験のように楽しんでいました。
- ヨーグルトを毎日同じ時間に作ることで生活リズムが出来ました。これからもヨーグルトを作る習慣を続けていきたいです!
- 責任持って自分の役割を果たしたり、成長を感じました。ヨーグルト作りを通じて子供との会話も増え私自身も楽しめました!
自宅でカンタン!ヨーグルトを手作りしよう!
「カスピ海乳酸菌」を使ったヨーグルトは、牛乳に混ぜるだけなので、家庭でも簡単に作ることができます。
ヨーグルトを日常的に手作りすることで喜ばしい変化が見られる可能性が示唆されています。さらに、ヨーグルトを食べることでカルシウム不足も補えます。自宅でちょっとした実験気分も楽しめるので子どもの自由研究のテーマとしてもおすすめです。
◆ヨーグルトの手作り方法
用意するもの
- 牛乳…500ml
- 種菌粉末…1包(3g)
- 熱湯殺菌したフタの付いた容器
- 熱湯殺菌したスプーン
発酵時間の目安
- 25〜30℃の場所…24時間前後
- 20〜25℃の場所…24時間〜48時間前後
- 固まるまでの時間は季節によって変化します。
- 気温が高いと早く固まり、気温が低いと時間がかかります。
作り方
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1.熱湯殺菌した容器に牛乳を入れます。
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2.粉末種菌(1包)を加えます。
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3.熱湯殺菌したスプーンでよく混ぜます。
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4.フタをして固まるまで放置。固まったら冷蔵庫に保存してお召し上がりください。
出来上がったヨーグルトを種にして植え継ぎをすることも可能です。上手くできたら、容器中心部を次のヨーグルトを作るための「種ヨーグルト」として取っておきましょう。
◆ヨーグルトの手作り方法
1.牛乳、種ヨーグルトを入れて、
全体によく混ぜる。
- 牛乳の量…(500mlの場合)
…種ヨーグルトの量:大さじ3杯(約50g) - 牛乳の量…(1lの場合)
…種ヨーグルトの量:大さじ6杯(約100g)
- 種ヨーグルトは多すぎると固まりません
2.フタをして固まるまで放置
<目安時間>
- 20〜25℃の場所:10〜48時間前後
- 20〜25℃の場所:10〜48時間前後
固まったら完成。冷蔵庫で保存します。
「種ヨーグルト」は冷蔵で1週間、冷凍で1ヶ月間、保存できます。冷凍保存した「種ヨーグルト」は、そのまま牛乳へ入れて軽くかき混ぜてください。「種ヨーグルト」が完全に溶けなくても問題ありません。
※注意:種となる菌は植え継いでいくと弱っていきます。できれば毎月、最低でも季節ごと(3ヶ月に1回)に新しい種菌に取り替えることをおすすめします。
自宅でちょっとした実験気分を味わえるので、楽しみながら親子のコミュニケーション時間を増やすことができます。
まとめ
親子のコミュニケーションや子どものQOL向上にも役立つヨーグルトの手作り。
簡単にできるので、親子で楽しんでみてはいかがでしょうか。
【引用文献】
(1)人口動態・家庭のあり方等社会構造の変化について 総務省(2018)
(2)第四次食育推進基本計画 総務省(2021)
(3)「ヨーグルトの手作り行動を活用したフレイル予防プログラムの開発-健常高齢者を対象とした予備試験-」科学と工業、97(11)、335-339、2023
関連の研究資料
田畑ら, (2025). Lactococcus cremoris subsp. cremoris FC 株を用いたヨーグルトの手作りによる子どもの Quality of life の向上. 日本食育学会誌, 19(2), 53-62.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokuiku/19/2/19_53/_article/-char/ja